普段あまり意識することは少ないですが、私たちの生活には「簿記」が密接に関わっています。
なんとなく「面倒くさそう…」というイメージを持っている方も多いかもしれないですが、その歴史を見てみると簿記がどれだけ人類にとって欠かせないものなのかが見えてきます。
「お金の流れを記帳する」という概念は、なんと、約4000年前から存在しているのです。
私たちが現在採用することの多い『複式簿記』としても、約600年近くもの歴史があるのです。
今回は、そんな私たちの生活に必要不可欠な簿記の歴史について、お話していきます。
う…簿記と聞くだけで確定申告の苦労が思い出されるよ…
少しでも身近に感じることで、その心理的な壁を取り除いていこう…笑
簿記の概念は約4000年前から存在した
人類が歴史上で初めて簿記を使用したのは、今からおよそ4000年前、古代バビロニア人たちだったとされています。
紀元前2000年~紀元前1700年頃の、ハンムラビ法典にその痕跡が記されているのです。
やがて古代ギリシャで貨幣が造られ、会計記録を記帳する文化が根付いていったのです。
複式簿記の起源はイタリア
現在の複式簿記はイタリアから始まったとされています。
約600年前、ヴェニス地方(ヴェネツィア)の商人たちはすでに、ひとつの取引における借方と貸方を記載し、お金の流れを正確に記録していたのです。
12~13世紀、イタリアの商人たちは、香辛料や茶、陶器といった商品を中国やインドから運んで販売しており、非常に豊かな生活を送っていました。
しかし、商売で手に入れたお金を現金で保有するわけにも行かず、銀行が発行した手形と交換しておきます。この手形と現金の数字を記録しておくために紙に書いて記録する「簿記の技術」が生まれたというわけなのです。
複式簿記が普及した背景
その後、ある2人の功労者によってイタリアから複式簿記の理論が世界中に広まっていくことになります。
イタリアの商人、マルコ氏
イタリアで商人として大成功をおさめたとされるマルコ氏は、経営状態を正確に把握するために1年ごとの財務諸表を作成し、経理実務の記録をすべて保管していたのです。
この習慣を取り入れていたのは当時マルコ氏の商会だけであり、この時の資料が後の複式簿記の発展を大きく支えることになったと言われています。
ルカ・パチオリ氏
世界で複式簿記を広く知らしめることになったのが、1494年にルカ・パチオリ氏が書き上げたとされる『スマム大全』です。
このスマム大全は、ヴェネチア商人が採当していた簿記の計算方法を事細かに紹介したもので、日記帳、仕訳帳における処理、各勘定の取り扱い、決算などの項目について詳細に記述されていました。
これによって、複式簿記が確立されていったのです。
現代簿記に欠かせない「減価償却」が生まれたのは産業革命
少し簿記を学習したことがある人は”減価償却”をご存知でしょう。
減価償却とは、長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。
Wikipedia
簡単に言うと、ある年に長期間使用する大きな買い物をしたとき、その商品価値がなくなるまでの数年にまたいで会計処理を行っても良いという概念です。
この減価償却が生まれたのは、産業革命時に登場した『鉄道』があまりにも大きな金額が必要だったため、それまで現金の記録だった簿記を会計上で変えてしまえるようにしてしまったのだとか。
ややこしいと感じられる簿記も、歴史を知ると意外と面白いですね。
鉄道の規模が大きすぎてこれまでの形式に収まりきらなかったのか。
時代に合わせて、簿記も少しずつ変化していったんだ。
日本の簿記の歴史
日本で会計簿記の考えが定着したのは、商人が活躍した江戸時代でした。
その後、明治6年(1873年)にようやく西洋式の複式簿記が入ってきます。
この時、日本で複式簿記が広まるきっかけになったのが、福沢諭吉による『帳合之法』であると言われています。
福沢諭吉!やっぱり、すごい人なんだね。
「帳合之法」はアメリカの商業学校の簿記教材を翻訳しただけのものだったそうですが、当時の日本人にとっては画期的な真新しい内容だったのです。
そして、明治11年に日本政府が「太政官第42号通達」を出し、複式簿記の正式採用を決定したのです。
まとめ
- 簿記の概念は、約4000年前のハンムラビ法典まで遡る歴史あるものでした。
- 現代の会計基準の基本である複式簿記も、その起源は約600年前まで遡ります。
- イタリアから複式簿記を広く普及させたきっかけは商人マルコ氏と、「スムマ大全」を書いたルカ・パチオリ氏。
- 産業革命で「減価償却」という会計法が生まれた
- 日本で複式簿記を広めたのは福沢諭吉
すごく複雑で面倒なイメージしかなかったけど、歴史を知ると面白かったね。
参考文献
この『会計の世界史』という本の中で簿記の起源についても触れられていて、それが面白かったので記事にしてみました。
「ダビンチから始まり、ビートルズとマイケルジャクソンで終わるなんて会計本が未だかつてあっただろうか––」ってレビューに書かれているね。笑
面白そうでしょ?笑
『会計本の最高傑作』との称される素晴らしい本だよ。