みなさんは『ダニング=クルーガー効果』というものをご存知でしょうか?
これは一言で言うと、
能力の低い人ほど、自分を過大評価する
という、認知バイアスの一種です。
たしかに周りにこういう人いるなぁ。
ふふふ。自分を棚に上げて、他人に例を探すその思考こそ、ダニング=クルーガー効果なんだよ。
なっ…!
さて、みなさんはこのダニング=クルーガー効果(能力の低い人ほど、自分を過大評価すること)を知って、どう思いましたか?
私は、以下のような疑問を抱いてしまいました。
- なんで能力が低いのに自分を過大評価しちゃうの?
- どうすればこのダニング=クルーガー効果を回避できるの?
今回は、これらの疑問を解消するべく、『ダニング=クルーガー効果』について詳しく調べてきました!
ダニング=クルーガー効果とは
『ダニング・クルーガー効果』(Dunning-Kruger Effect)とは、1999年にコーネル大学のデイヴィッド・ダニング博士とジャスティン・クルーガー博士によって発表されたもので、
冒頭でも述べた通り『能力の低い人ほど、自分を高く評価してしまう』という認知バイアスのことです。
例えば、博士らは65名の大学生たちを対象に「ユーモアへの理解度を自己評価してもらう」という実験を行いました。
- 30個のジョークを読ませて、どれほど面白かったかを評価してもらいます。
- これにより学生たちの「ユーモアの理解度」を測定し、順位付けしておきます。
- 次に、「あなたのユーモアの理解度は同年代の中でどのくらいだと思いますか」と質問します。
この調査の結果、ユーモアの理解度が低い人ほど自己評価が高い傾向があることがわかったのです。
ユーモア理解度が下から25%の人は、平均して「自分は上位40%ほどだ」と過大評価した。
一方、上位25%の人は「自分は上位30%ほどだ」と過小評価した。
これはなかなか衝撃的な結果だね…。
ね。人はすごく面白い生き物なんだ。
この現象は、論理的思考力や一般的な学力試験にまで普遍的に見られることも論文ではまとめられており、2人の博士の名前にちなんで『ダニング=クルーガー効果』と呼ばれるようになったのです。
なぜ能力が低い人は自分を過大評価してしまうのか
では、なぜ『ダニング=クルーガー効果』は起こってしまうのでしょうか。
2012年にダニング博士とクルーガー博士によって行われた「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という調査によれば、能力の低い人間は以下のような特徴があることが分かったそうです。
- 自身の能力が不足していることを認識できない
- 自身の能力の不十分さの程度を認識できない
- 他者の能力を正確に推定できない
つまり、能力が低い人は『メタ認知』(自分を客観視する能力)がうまくできないために、自信の能力の低さを認識できないのではないかとされています。
ダニング=クルーガー効果に陥らないための対処法
私たちの脳には、恐ろしい認知バイアスの性質があることは分かっていただけたかと思います。
では、自分がダニング=クルーガー効果に陥らないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
ダニング=クルーガー効果に陥ってしまうとそのことは自分では認識できないので、前もって予防するように心がけることが大事だそうです。
それについては、ダニング博士が「Reddit」という掲示板にてコメントを寄せてくれています。
常に学び続ける
常に学ぶ姿勢を持ち、有能になりなさいとのこと。当たり前といえば、当たり前ですね。
実際に有能になってしまえば、確かに安心だね。笑
だけど自分では有能かどうか判断できないから、常に学び続けることが大事なんだね。
–– 学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。
アルベルト・アインシュタイン
自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる。––
不慣れなことをする時は注意する
ダニング=クルーガー効果の影響を最も受けやすいのは、新しいことに挑戦する時や、まだ慣れていないことをする時だと博士はいいます。
「先日自動車を購入したが、人生でまだ4度目の経験だったので、車のことや車の買い方について、たっぷり時間をかけて調べました。」と自らを例に挙げて説明されています。
急がず、慎重に
「迅速かつ衝動的に下した決断には注意が必要だ。急いで結論を出そうとする人は、自信過剰になりやすい。」と博士は注意しています。
熟練した専門家であれば別ですが、一般的には急いで下した決断は見方が偏っている場合が多く「この決断は誤りではないか」と、常に疑ってかかるのが効果的だといいます。
自信を持つことは悪いことなのか?
ダニング=クルーガー効果について知ってしまうと、「自分の自信は間違ったものなのだろうか」と不安になってしまう人もいるでしょう。
そんなことはない、とダニング博士はいいます。
しかし、正しい場、正しいタイミングで正しい使い方をするように心がける必要があるとのこと。
例えば アスリートは、自己満足するためではなく、さらなる努力を積むためや戦略を立てる助けとして「自信」を使いこなすのだ、とおっしゃっています。
They don’t use confidence to become complacent, but to use confidence to put in the extra effort and strategizing that will help them excel.
クルーガー博士のコメント最下部
ダニング=クルーガー効果に関する情報まとめ
最後に、ダニング=クルーガー効果についてわかったことをまとめておきます。
- ダニング=クルーガー効果とは、能力の低い人ほど、自分を過大評価してしまうこと
- なぜかというと、能力の低い人は自分の能力不足を認識できないから
- 一番の対策は、常に学び続ける姿勢を忘れないこと
- 自分に自身を持つこと自体は、悪いことではないが、使い方を間違えないように注意が必要
能力が高かろうが低かろうが、常に学び、前進することを心がけよう。
その他の認知バイアスについて
今回紹介したダニング=クルーガー効果という認知バイアスの他にも、人間にはかなりの数の認知バイアスがあることが分かっています。
それらをうまくまとめてくれている、『認知バイアス辞典』とも呼ばれている本があるので紹介しておきます。
脳科学者として有名な池谷 裕二さんが書いている本です。
池谷さんが書いた脳に関する本は他にもたくさんあるから、ぜひ気になる本を探してみてね!