心理学と脳科学の違いってなんだろう?
最近色んな本を読んでいると、これは心理学なのか?脳科学なのか?ということが分からないことがあり、ふと気になりました。
例えば、「悪い習慣をやめるにはどうすればいいのか」という話には心理的なテクニックもあれば、脳科学的に脳の中のドーパミンに着目してその原因を取り除くテクニックなどが紹介されていたりします。
つまり、心理学でも脳科学でも、同じことについて研究してることがあるようなのです。
同じことを研究しているのに、方や心理学の研究として発表されていたり、脳科学の研究として発表されていたり…。
じゃあ、その線引きはどうなってるの?
みなさんも、気になりませんか?
言われてみればたしかに、区切りが曖昧な気がするね
ということで、
- 心理学、脳科学とは?
- 心理学と脳科学との違いは?
ということについて調べてきたことをまとめていこうと思います。
心理学とは
そもそも、心理学とは何なのでしょうか。
ひとまず手始めに「心理学」についてWikipediaで調べてみると、
心理学とは、心と行動の学問であり、科学的な手法によって研究される。
Wikipedia – 心理学
とあります。
研究対象は「心」と「行動」なのですね。
また、心理学にはいろんな種類があり、大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」に分けられます。
基礎心理学とは、「こういう行動をした時、どういう心理状態なのか?」あるいは「こういう心理状態にある時、どういう行動を取るのか?」ということを研究します。
大人数を対象にした観察・実験・調査などによって、統計学的に「心と行動に関する一般法則」を見つけ出そうとするものです。
その基礎心理学によって解明された、人と行動を結びつける一般法則(基礎理論)を、世の中の問題(教育・経済・犯罪・政治など)を解決するために応用しようとするのが、応用心理学です。
心理学は、心と行動の結びつきにどのような法則があるのかを、主に統計学的に調べる学問
脳科学とは
脳科学についても、Wikipediaで調べたところ、
脳科学とは、ヒトを含む動物の脳と、それが生み出す機能について研究する学問分野である。
Wikipedia – 脳科学
とのことです。
研究対象は「脳」で、心理学と同じように「思考」や「情動」も研究されますが、これらもあくまで「脳機能」として扱います。
「こういう行動をする時、脳はどう働いているか?」あるいは「こういう心理状態の時、脳にはどんな物質が分泌されているか?」など、心理状態が変化する時や行動する時、「脳のどこががどうなっているのか」を物質的に調べるのが脳科学です。
脳科学とは、思考や行動、認知について、脳がどのように働いているのかを物質的な変化として調べる学問
心理学と脳科学の違いまとめ
心理学と脳科学の違いをおさらいしておきましょう。
心と行動を研究対象にし、両者の結びつきにどのような法則があるのかを「統計学的に調べる」学問
脳の働きを研究対象にし、心や行動によって脳がどのように変化するのか「物質的に調べる」学問
※ 個人的に納得できるように表現していますので、両者の専門家から見ると「全然違うよ!」と思われるかもしれません。もし何かご指摘がある場合は、Twitterからご遠慮無くお申し付けください。
例えば、冒頭で述べた「悪い習慣」について見てみると、
「ついお酒に手を出してしまうのは、ストレスが多くかかっている時が多い」のように、行動の原因を心理状態で捉えるのが心理学。(もちろんストレスだけが原因ではない)
「ついお酒に手をだしてしまう時、脳の中でドーパミンが分泌されている」のように、行動の原因を脳内での変化で捉えるのが脳科学。(もちろんドーパミンだけが原因ではない)
「つい甘いものに手をだしてしまうのはなぜか?」という一つの疑問について、心からアプローチするのか、脳内の変化からアプローチするのかが違うのです。
また、「年を取ると記憶力が衰える原因はただの思いこみだった」という面白い研究がありまして、
- 「年をとると記憶力が衰える」という思い込みがあると、記憶力テストの点数が若者より低くなる
- しかし、記憶力テストではなく心理学の実験として同じテストを行うと、若者との差がなくなった
という心理学の実験がありました。
「年をとると記憶力は衰えるのか」という疑問について、心理的な側面で実験したのです。
じゃぁこれについて脳科学的に見てみるとどうなのかというと「脳細胞の数は年をとっても減少しない」ことが分かっているので、記憶力が年齢によって低下しないのは当たり前なんですよね。
ただし、「思い込みによってなぜ記憶力が低下するのか?」というのは、まだ脳科学的に解明すべきポイントです。
このように、
茂木健一郎さんが解説する「脳科学と心理学の違いとは」
さらに調べていると、「脳科学と心理学は何が違うか」を脳科学者として有名な茂木健一郎さんがYoutubeで分かりやすく説明してくれていました。
さいごに、この動画の概要も紹介しておこうと思います。
たった3分ほどの動画だけどすごく興味深い内容だったよ。
脳科学と心理学の研究対象は重なる事が多い
心理学と脳科学は、全く別物というものではなく、両者は密接に関わっています。
例えば、相手の心を読み取る能力(マインド・リーディング)についてや、「能力が低い人ほど自分の能力を過大に見積もる傾向がある」という、有名な『ダニングクルーガー効果』などについては、脳科学においても重要なテーマになっているそうです。
つまり、心理学や認知科学の研究対象は、脳科学の研究対象になることが多いというこ。
脳科学と心理学は何が違うのか
じゃぁ、心理学と脳科学の違いは何かというと、
最終的に物質としての脳の働きに基づいて色々ことを説明しようというところが違うんだと思います。
と 茂木さんおっしゃっています。
例えば、『 fMRI 』という装置でさまざまな脳活動を観察したり、あるいは、電極を使って単一の神経細胞の活動記録したり、脳波計だとが脳磁計だとか、様々な方法を使って「脳の計測」をしたりするわけです。
さらに、100種類にも至らんとする脳内伝達物質の作用がどのように脳の機能を支えているのかなど、このような物質的な働きによって最終的には、人の心の動きなどを裏付けするというのが、脳科学だといいます。
さらに最近では、遺伝子発現がどの時期にどの回路で起こってくるのかということを調べて、それをビックデータとして整理するような試みも行われているそうです。
認知科学や心理学の手法も、脳科学でも使いますし、行動経済学、ゲーム理論だとかそういう手法も使うそうです。
しかし、
それら全ての手法を結局は「物質である脳の働き」に帰着させる
というところが、脳科学という学問の領域だそうです。
脳科学と心理学の共通点・異なる点
この動画の内容から、脳科学と心理学の共通点と、異なる点についての解釈をコメント欄でまとめてくれている人がいたので、引用しておきます。
【共通部分】 研究対象(心の理論や認知過程など)はほとんど重なる。 心理学から明らかになった事象を(多くは定量的に)脳科学によって捉え直す、という関係が多い。
mukushiiiiさんのコメント
【異なる部分】 脳科学:精神的な現象は脳の物理的変化(電位や化学物質)による結果という立場。 心理学:精神的な現象は心の何かしらの機能による結果という立場。 つまり、明らかにしようとしているのが「脳の仕組み」なのか「心の仕組み」なのかという違いがある。