スマホ依存症・ギャンブル依存症・アルコール中毒・ネット中毒・薬物依存など…。
今回は、これら『依存症』の原因や中毒のメカニズムについて解説していき、その対策方法も紹介します。
- スマホをどうしてもすぐ見てしまう…。
- ギャンブルを辞めたいのに通ってしまう…。
- お酒やゲームがやめられない…。
これら依存症の原因は一体なんなのか、結論を先にいうと、
『ドーパミン』が過剰分泌されることが主な原因。
だということが分かっています。
ドーパミンって、いわゆる『快楽物質』ってやつだよね?
『快楽物質』とは呼ばれるけれど、実際に快楽を与えてくれる物質ではないんだ。
え?そうなの?
「もっと欲しい!」と期待させるだけのホルモンなんだ。
人が依存症や中毒症状になる主な原因としては、神経伝達物質であるドーパミンの過剰分泌が大きく関わってきます。
- なぜドーパミンが過剰分泌されてしまうのか?
- 依存症になる時、一体脳の中では何が起こっているのか
- 依存症への対策方法は?
ということについて、詳しく見ていきましょう。
あまり専門的すぎる用語は出さずに、わかりやすく説明していこうと思います。
依存症とはどういう状態?
そもそも『依存症』とはどういう状態を指すのでしょうか? 脳科学辞典によると、以下のように説明されています。
快情動を生じる物質の摂取や行為などを繰り返し行った結果、これを求める耐え難い欲求が生じ、これらを追い求め、これらがないと不快な症状を生じてしまう状態。
ページ:依存症
つまり、一時的で急激な刺激を何度も得ることで、その刺激をさらに欲するようになり、刺激がないと体が我慢できない状態 のことです。
「体が我慢できない」とは、その依存対象によって症状は異なりますが、
- スマホを手に持っていないと不安にかられて何も集中できない
- アルコールが切れると手が震えてくる
といった状態ですね。
体が我慢できなくなるところまで深刻になってしまうと、『依存症』と診断されます。
逆に言うと、「ついつい手を伸ばしてしまう」くらいの「気持ちが我慢できない」くらいであれば、まだ依存症への悪化は防ぐことができます。
依存のメカニズムを知っておくことで対策できるようになるんですね。
そういうこと。依存への対策法も後半で紹介するよ。
依存症の原因はドーパミンを過剰分泌させる2つの刺激にあり
冒頭で『依存を引き起こす脳への刺激』があると説明しましたが、この刺激を繰り返してしまうことで、人は依存状態へ陥っていきます。
そして、この刺激というのは大きく分けて2種類あります。
それぞれ説明していきます。
原因1:「強烈な期待があるのに、実際の報酬が何もない」を繰り返すパターン
『強烈な期待』というのはドーパミンがたくさん分泌されている状態のことを指します。
ドーパミンは『快楽物質』や『喜びのホルモン』などと呼ばれますが、それは大きな誤解を招く表現です。
実際は、
ドーパミンとは『期待』させるだけのホルモンです。
脳に「お!何か手に入るかもしれない!」と思わせて、行動に結びつけてくれるものなのです。
なので、本来はモチベーションアップなどに繋がる非常に有益なホルモンなのですが、
『期待』の先に『報酬』がない状態が続くと、報酬を求めて脳が暴走し始めてしまうのです。
例:ギャンブル依存
例えば、ギャンブルの「当たりそうで当たらない」状態がこれに当たります。
当たりを期待させる演出によって、ドーパミンがどばどばと出てきて、脳が刺激されます。
しかし結局、ハズレで終わることがほとんどですよね。
脳は「すごく良い何かが得られそうだ!」と興奮したのに、「あれ?何もなかったな…」となってしまうわけです。
すると脳は「報酬を得るためにはもっと刺激が必要なんだ」と、さらなる刺激を求めてしまうのです。
ギャンブルではこれが何度も繰り返され、脳がどんどん麻痺していくんだね。
しかも、「たまに報酬が与えられる」のがギャンブルの怖いところだよ。
実際に報酬を与えられることで、「これを続けるとまたあの報酬がもらえるんだ!」と脳はさらに刺激を求めてしまいます。
しかし、強い刺激に慣れてしまった脳は、ちょっとやそっとの報酬では満足できない状態になっています。
これがギャンブルから抜け出せなくなるメカニズムです。
例:SNS・ゲーム中毒
SNSやゲームへの中毒症状も、同じように『期待と報酬の差』が原因で起こります。
例えば、SNSで『イイネ』をもらった時や、ゲームで『良いアイテム』を手に入れた時、「何か報酬があった」と脳が錯覚します。
しかし、現実世界では何も手に入れてはいないですよね。実際に物が手に入ったわけでも、お腹が満たされたわけでもありません。
「お、何か良いものかな?」と脳は刺激されるのに、「なんだ、何もなかったのか…」となります。
期待ばかりを繰り返し、脳はドーパミンだけを過剰に出し続けてしまうのです。
これを繰り返すと、ギャンブルと同様、脳はこの刺激に慣れてきます。
『イイネ』や『アイテム』を手に入れても、脳は「だから何?もっといいの頂戴」とより強い刺激を欲するようになります。
それによって、「もっとイイネを集める」ことや「もっといいアイテムを手に入れる」ことに夢中になってしまいます。
『実際の報酬』はどうやったって与えられないもんね。
そう。だから『架空の報酬』を増やすことでしか刺激を強めることができないんだ。
スマホゲームのガチャは最悪
スマホゲームやソーシャルゲームの『ガチャ』の中毒性は最悪です。
ギャンブル性を持ちながら、やっとのことで手に入れた報酬は『架空の報酬』なのですから…。
脳が麻痺するのも無理ないね…。
原因2:「喜びが簡単に手に入るが、すぐに消えていく」を繰り返すパターン
もう一つの原因は「喜び(報酬)はちゃんと手に入るけれど、その喜びがすぐに消えていく」という状態を繰り返すことです。
軽いケースだと「間食をやめられない」などもこれが原因だよ。
例えば、ポテチなどを買って口に運ぶだけで、簡単に喜びを得ることができます。
しかし、その喜びはすぐに消えていくものです。
結局、大きい満足感が得られず、脳は「もっとほしい!」となってしまいます。
そしてまた買ってしまい、その喜びもまたすぐに消え、さらに求めていきます。
なるほど、負のループだね…。
これを繰り返すと、「もっと!もっと!」というドーパミンが分泌され続けた状態になり、脳が麻痺していきます。
タバコ依存
タバコも同じです。
買って口にするだけですぐにいい気分になることができますが、その脳の興奮はすぐに消えていきます。
でも、タバコってポテチなんかより中毒性はかなり強いよね?
タバコに含まれる『ニコチン』が『アセチルコリン』という物質のフリをするんだ。
あせちるこりん?
簡単に言うと、大量のドーパミン解放の引き金となる物質だよ。
タバコを吸うと、『ニコチン』によってドーパミンの分泌量が増加するようになります。
そのため、ポテチなどより「もっと!もっと!もっと!!」となってしますのです。
アルコール依存
アルコール依存もこの『原因2』のケースです。
アルコールも中毒性高いよね?
アルコールもまた、依存を促進する別の理由が加わるんだ。
アルコール摂取による「喜び」のメインは、「酔うこと」ですよね。
しかし、アルコールは日常的に摂取することで耐性が出てくるため、同じ飲酒量では「いつもより酔えなくなる」のです。
脳は喜び(酔うこと)を求めているのに、その喜びを手に入れるのがだんだん難しくなっていきます。
それにより、飲酒量は日に日に増大していき、脳も、体も、麻痺していくのです。
更に、『酔うこと』は現実逃避にも繋がるため、「アルコールから抜け出せない自己嫌悪感をアルコールで緩和しようとしてしまう」という最悪の状況に陥っていく人もいます。
アルコール怖すぎ…
依存症の人の脳はどうなっている?
ここまで、人が依存症に陥るまでの原因・メカニズムを説明してきました。
その中で、「ドーパミンが過剰に分泌されて脳が麻痺する」というような表現をしてきましたが、「脳が麻痺する」とはどういう状態なのでしょう。
ドーパミン受容体がぶっ壊れる
『ドーパミン』が正常に働くには、『ドーパミン受容体』と呼ばれるレセプターが必要になってきます。
レセプターと繋がることで、本来の効果である認知機能向上や、モチベーションアップ効果などを得られるのです。
しかし、依存症や中毒状態の人の脳は、ドーパミンが過剰に分泌されることでレセプターがぶっ壊れていくのです。
実際に依存症の人の脳を調べた研究では、ドーパミン受容体の量が普通の人より減少していたそうです。
レセプターが減少することにより、脳へは様々なダメージが発生します。
このことを「脳が麻痺する」と簡潔に表現していました。
うつ病につながることも
「どうしてもやる気が出ない」という症状は、『やる気』を起こさせるためのドーパミン量が不足していることが原因だとよく言われています。
しかし、このやる気が出ないという症状は、ドーパミン受容体が少ない場合でも起こるのです。
ドーパミンはレセプターがセットになって初めて『やる気』に繋がるんだ
依存症への対策方法
最後に、まだ依存症とまではいかないけど「ついやってしまう」ことへの対策方法を紹介しておきます。
タバコ・間食・ネット・ゲームなど、自分の『ドーパミントリガー』となっているものに触れる回数をどんどん減らしていくことが大切です。
本格的な依存症へ悪化する前に、ちょっとした工夫で食い止めましょう。
対策1 : 他の行動で置き換え、10分だけ我慢する
ポイントは、「10分だけ我慢する」ということ。
「ほしい!やりたい!」という時に出てくるドーパミンは、およそ10分ほどで消えていくのです。
禁煙時の「タバコの代わりに飴を舐めたりやガムを噛む」というのはこの『10分』を稼ぐための一つの手段です。
- 小腹が空いてポテチを食べたくなったらまずは健康的なナッツを食べる
- SNSを開きたくなったら、とりあえず他の有益なアプリを開く、Kindleで本を読み始める
- お酒が飲みたくなったらペットボトルの水をがぶ飲みする
などなど、自分ができそうな工夫を探してみましょう。
対策2 : アクセスを面倒にする
「欲しい、やりたい!」と思った時に、「でも面倒だな」という感情を優先させる対策です。
- スマホをできるだけ遠いところに置いておく。
- ゲーム機はタンスの中にしまう。(できれば捨ててしまおう)
- 出勤時にカバンに入っているタバコは捨ててしまう・ロッカーにしまっておく。
「いちいち買いに行かなきゃいけない」「あそこまで取りに行かないといけない」など、面倒な気持ちで打ち消すのです。
『対策1』での『置き換えアイテム』を代わりに身近においておくと更に良いでしょう。
対策3 : できるだけ目に入らないようにする
欲求が発生する頻度をできるだけ減らすことも大切です。
- アプリを削除する
- 家に残っているお酒やタバコは朝一で捨てておく
- コンビニ・スーパーに入る頻度をへらす
対策4 : 他の人に協力してもらう
対策2や対策3は、意志力がないと自分ではなかなか実行できないでしょう。
なので、誰かに頼んで自分から遠ざけてもらうのも一つの手です。
- 別の人に隠してもらう
- 別の人に捨ててもらう
対策5 : 運動する
運動は最高の対策方法です。
- 運動すると、ドーパミン受容体が回復する
- 運動する時間を増やすことで、依存対象を意識する時間が相対的に減少
- 疲れによって睡眠を誘導し、寝る前の「つい…」が減っていく
- その他、純粋に運動による体への良い影響がたくさん得られる
すでに重度の依存症レベルの場合は医療機関へ
アルコールがきれると手が震える、スマホがないと不安でしょうがないなど、重度の依存症の場合は、自力でなんとかするのは難しいでしょう。
その場合は、大人しく医療機関へ相談へいくことをオススメします。
ここまでくると意志の力ではどうもにもできないね。
まとめ:依存症の原因にはドーパミンが深く関わっていた
依存症の主な原因はドーパミンの過剰分泌によるものでした。
さいごに、今回の話をまとめてきます。
- ドーパミンを過剰分泌させて「依存を引き起こす脳への刺激」が2種類ある
- 「強烈な期待があるのに、実際の報酬が何もない」を繰り返すパターン
- 「喜びが簡単に手に入るが、すぐに消えていく」を繰り返すパターン
- 依存症への対策方法
- 他の行動で置き換える
- アクセスを面倒にする
- できるだけ目に入らないようにする
- 他の人に強力してもらう
- 運動する
- 重度の場合は医療機関へ